近年、矯正用マウスピースや、就寝時の歯ぎしり、食いしばり防止マウスピースの使用が増加しています。
毎日の使用や日常生活におけるストレスの軽減など、さまざまな背景がこの増加を後押ししています。
一方で、お口のケアに関して新たな問題点が浮上してきました。
それは、マウスピースへの歯石の付着です。歯石は、歯の表面に付着する歯垢(プラーク)が石灰化したもので、硬くて黄白色をしています。歯垢は、食べ物の残りや細菌、唾液などが混ざり合ったもので、これが長時間歯に付着していると、石灰化して歯石となってしまいます。歯石は、歯ブラシだけでは簡単には取り除けません。マウスピースを使用することで、歯垢の付着が増えるリスクがあるため、矯正中の口腔ケアの重要性がより高まってきています。
マウスピースの使用中の変化
唾液の役割とマウスピースの影響
唾液は私たちの口腔内で非常に重要な役割を果たしています。それは、食べ物の消化を助けるだけでなく、口の中に潤いを与え、細菌の増殖を抑える役割も担っています。また、唾液には歯を再石灰化する効果もあるため、虫歯の予防の効果もあります。
マウスピースを使用すると、歯と唾液との直接的な接触が少なくなります。これにより、唾液が歯の表面に十分に行き渡らなくなる可能性があり、再石灰化の効果が低下することも考えられます。また、マウスピースの中は湿った環境が続くため、細菌の増殖が促進されるリスクが高まることも懸念されます。
マウスピース装着中の歯と歯茎の状態
矯正用マウスピースを装着することで、歯の移動を促す力がかかります。この力により、歯の位置が徐々に変わっていくのですが、それに伴い、歯周組織にも変化が生じることがあります。歯と歯茎の間や、歯茎とマウスピースとの間に食べ物の残りや歯垢が溜まりやすくなるため、清潔に保つことがとても重要となります。
マウスピースの長時間の使用や不適切なケアは、歯茎の赤みや腫れの原因となることがあります。これは、歯周病の初期症状とも重なるため、定期的な歯医者さんでのチェックや、適切なマウスピースケアが不可欠です。
歯石の発生メカニズムとマウスピース
マウスピースの材質と歯石の関係
マウスピースは、柔軟性や透明性を持つ特殊なプラスチック製の素材で作られています。
この材質は、口腔内での適切なフィット感を持たせるためのものですが、その一方で、微細な凹凸が存在することが特徴的です。このような凹凸は肉眼では確認しづらいものの、歯垢や細菌が付着しやすい環境となっています。
歯垢は、食べ物の残りや細菌、唾液などが混じり合ったもので、この歯垢が石灰化することで歯石になります。マウスピースの素材が歯垢の付着を促進する性質を持つため、放置しておくと歯石の発生リスクが高まるのです。
使用方法やお手入れについて
マウスピースは、矯正治療の目的やケアの方法に応じて、1週間から10日にわたり継続的に使用されます。この期間中、毎日の使用や食事の際の取り外し、そして再度の装着を繰り返すことになります。この過程で、マウスピースに食べ物の残りや唾液が付着することは避けられません。
さらに、日常の清掃方法が不適切だと、これらの付着物が取り除かれずに残ってしまいます。特に、マウスピースの内側はブラッシングが難しい部分もあり、十分なケアがされない場合、これが歯石の原因となることが考えられます。継続的な清掃と、時々の専門的なクリーニングが必要となるのは、このような背景によります。
歯石付着を予防する清掃方法
マウスピースの清掃は、毎回の取り外し後、必ず行うことが推奨されます。
まず、流水でマウスピースを洗浄し、食べ物の残りや唾液を取り除きます。
その後、柔らかい毛の歯ブラシを使用して、優しくブラッシングします。ここで注意するのは、歯磨き粉は使用しないことです。
一部の歯磨き粉は研磨剤が含まれており、マウスピースの表面を傷つける可能性があります。最後に、十分に水で洗い流し、清潔なペーパータオルで水分を取り除き、清潔にしたお口の中へと戻します。
正しいマウスピースのケア方法
矯正用マウスピースのケアには、専用のクリーニング剤やケア用品の使用が推奨されます。市販されているマウスピース用のクリーナーは、マウスピースの素材を傷つけることなく、効果的に清潔に保つことができます。また、抗菌作用を持つものを選ぶことで、細菌の繁殖を抑えることができます。
定期的に新しい歯ブラシを使用する、あるいは専用のブラシを用いることで、より効果的なケアが可能となります。おすすめの商品もご紹介できますので、遠慮なくお尋ねください。
まとめ
口腔内の健康は日常のケアから。歯石の予防は、歯磨きやフロスの日常習慣、そして歯科の定期健診によって大きく助けられます。マウスピースを使用する方も、これらの基本的なケアの重要性を忘れずにいていただけると幸いです。